「ねぇねぇ」
…最近、おはるの元気がよい。
元気がよいのはいいことだけど、子供の頃に戻ったみたいに忙しない。
まるで5歳児の女の子。
食べて寝て、わくわくとそわそわで満たされるといつも僕の傍にやってくる。
トイレだったり、おやつの催促は父で、具合が悪い時は母に助けを求め、遊び相手には僕を指名する。
そっと抜け出して、監督者のいない子供だけの雪原を一緒に走り回りたいのだ。
体中を雪まみれにして。
こう見えて僕もいい大人なのだけど…。
居間の扉を押し開けて、隙間から様子をうかがう。
黒い鼻先が、銃口のようにぴたりと僕に狙いを定める。
僕が「忙しそう」とわかると、引っ込めてくれることもあれば、居間の入り口に陣取って用が終わるのを見計らっている時もある。
だから努めて「忙しそう」にする。
明日、大事な会議があってね、なんて本当のことを囁いても始まらない。
気づかないふりをして意味もなくストレッチをはじめてみる。
飛び跳ねながら手を叩き、「あーっ!あーっ!」と忙しさを演出する時もある。
もはやどちらが獣なんだか。
だけど、相手は残るもう一匹、あまり気にしても仕方ない。
最近は、人の理屈の前に、僕の方が獣の掟を仕込まれている。
目を合わせるのは一番やってはいけないことだ。
気づいたうえで無視されることを彼女のプライドは決して許さない。
足音も立てずに近づいたかと思えば、
「ねぇってば!」
上目遣いで睨みつけ、服の裾、足や腿をガブリっ!
「ァ゛ーっ!痛い!!痛い!!!」
十分手加減してくれてるのはわかるけど、十分痛い。
彼女の野生と僕の都合のせめぎ合い。
最近はそんなことが日に何度も繰り返されている。
パンケーキに粉砂糖のトッピング。
胃もたれ気味の3時過ぎ、
まだまだ元気いっぱいのおはるは、急に走り出し、鼻先を雪に埋め、風の吹く方をじっと見つめている。
そして名前を呼べば、いつもの垂れ目でいつもより妙に幼い顔つきで僕を見る。
リードを強く握りしめ、そろそろ帰ろうかと振り向くと、デコボコの雪原に犬の肉球とどう見ても大人の足跡が多数。
…時間を忘れて、これじゃあ本当に子供みたいだ。
おはるの願いは叶ったようである。
帰れば疲れて寝てしまうおはるだけど、降り続ける雪がすべてを元通りにしてしまう。
目を覚ますまでの僅かな時間、明日の会議どうしようかなんて、僕は今日も大人になった脳みそを子供じみた言い訳のためにフル回転させている。
2024年もありがとうございました!
おはるのリードを掴んでいるつもりがぐいぐい引っ張られ、動画だけじゃなく、ブログをはじめてみたり写真に嵌まりだしたりと、自分的には世界が広がりだした1年でした。
おっかなびっくりで始めたことが皆さんに喜んでもらえたことが何よりの成果です。
来年もよろしくお願いします。
よいお年を!
Youtubeもやってます⇒秋田犬はるノ嬢@すぷりんぐちゃんねる(https://www.youtube.com/@user-zo6pt5rc2w)
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