酔っぱらいの一言にて
「あんたさ、おはるでYoutubeでも初めてみたらいいんじゃない?」
母の提案はいつも唐突だ。
当時、政治系Youtuberにのめり込んでいた母は、手のひらに映しだされる世の乱れをお釈迦様のごとく見下ろし、憂い、迷い、酒の道案内もあってかそんな結論に行きついた。
どうやら「大志を抱け」的なことを言いたかったようである。
しかし、酔っぱらいから放たれたブレイクショットは、思いがけずいい角度で跳ねまわりながらポケットへ。
そっけないふりをしながらも天啓を得たような心持ちでいた僕は、お釈迦様も知らぬうちにその日からこそこそと活動を開始した。
そんな僕の唐突さも親譲りだ。
道行の爺様に夏目雅子そっくりと言われたおはるは性格にちょっとクセはあるものの、そんなところも含めて薄目で見ればやっぱり、やっぱりかわいい。
ずる賢く、ひねくれ者で頑固者、
女王様気質まで兼ね備えた彼女は決して忠犬ではないけれど、
らしからぬ人間味に溢れている。
これは案外、イケるのではないか?
おはるに振り回されながらの2年間、
その荒療治で社会人として死に絶えていた好奇心には復調の兆しが見られ、令和生まれの秋田犬を連れ添って僕は旅立つ思いでYoutuberの扉をたたいた。
最初の一本目動画👇
あれから2年経って
この界隈では月数百万と稼いでいる猛者もいるらしい。
いいじゃないか。
最初は欲に目がくらみウケを狙った動画を「撮ろう」としたこともあった。
けれど、超大物女優ばりの気位と生まれ持った野性の勘でもってここぞという時にこそふいとカメラから視線を外すのである。
それに見られている動画を見ると可愛さを切り取って性格に厚化粧をしてあげたものよりも、等身大のワガママと翻弄されるもぐら家族を写したものがほとんどだ。
みんな物好きなことにすっぴんのおはるが好きらしい。
そんなこともあって僕の心境にも変化が生まれた。
Youtubeという名のアルバム制作をしようと思ったのである。
おはると一緒にいられるのもあと10年といったところだろう。年齢を思えば父母も元気に動き回れるのはそんなところだ。
おはるに振り回される日々のなかでカメラを回し、時には苦労して撮った映像にどんな音楽や文字を入れようか。
視聴者さんからの嬉しいコメントまで頂いて、そんなふうに頭を悩ませながら作ったアルバムの最後の一枚はなかなかにいい絵になっているはずだと思うから。
Youtubeもやってます⇒秋田犬はるノ嬢@すぷりんぐちゃんねる(https://www.youtube.com/@user-zo6pt5rc2w)
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